文|荻原 遥
今週末、いよいよ「2025 第八屆臺灣學校午餐大賽」の本番を迎えました。
大会当日は開会式、食育発表、調理実習、審査(試食)、閉会式(結果発表及び表彰式)で構成されています。
2日間にわたる会場準備では、関係者の方々と協力しながら、清掃や会場の装飾、調理器具の確認・配置などを行いました。18日に行われた調理器具の確認作業にあたっては、中国語で記載された器具リストをもとに、各名称が指す器具について事前に説明を受けた上で確認作業を進めました。中には見慣れない名称や形状の器具もありましたが、確認漏れや誤認がないよう、丁寧に照合・点検を行いました。また大会当日はYouTubeでのライブ配信も予定されていたため、音響・撮影機材や通信環境の最終確認も並行して行われていました。
翌19日は、出場者主体の準備が行われました。食材の搬入をはじめ、競技ルールの説明、調理場の操作確認、写真撮影会などが実施されました。出場者は最も遠方では台南から、食材を持参して到着されました。
調理場の操作確認では、器具の洗浄やコンロの火加減の点検、仕込みが必要な食材の準備などが行われ、各チームは限られた30分間の中で真剣に取り組んでいました。作業中には出場者から多くの質問が寄せられ、後に協会職員に確認したところ、キッチンの使用範囲や下準備の可否、エプロンの着替えタイミングなど、実践的な内容が中心だったとのことです。
準備がひと段落すると、出場者にはヘアメイクが施され、写真撮影が行われました。写真撮影は、大会において重要なプロセスの一つと位置づけられています。これまで、給食の現場で働く方々の姿はあまり表に出ることがなく、その高い専門性にもかかわらず、プロフェッショナルとして注目される機会は限られていました。本大会では、写真撮影を通して、彼らが“プロ”として扱われる特別な体験を得られること、そしてその仕事ぶりがより多くの人々に知られることを目的としています。初めはライトやカメラに緊張していた出場者も、撮影の最後には堂々とした姿で写真に収まっていました。
【大会当日に心がけたこと】
当日は限られた時間内で複数の工程が同時進行するため、実習生として自らの役割を的確に果たすと同時に、円滑な運営の妨げとならないよう配慮することを心がけました。特に以下の2点に留意して行動しました。
受付の様子
1.自らの担当業務を確実に遂行すること
私の主な業務は会場準備、受付、そして食育発表におけるタイムカードの掲示でした。準備期間も含め大会全体が中国語で進行する中で、周囲の状況をよく観察し、自分にできることには積極的に参加するよう努めました。運営の妨げとならぬよう、行動には細心の注意を払い、必要に応じて逐一確認をとるようにしました。
2.言語の壁を越えて、参加者とコミュニケーションを図ること
安心感や応援の気持ちが伝わるよう意識すること
出場者や関係者に不安や戸惑いを与えないよう、非言語的な工夫も含めてコミュニケーションを図ることを意識しました。出場チームの顔と名前を覚えるよう努め、目が合った際には笑顔であいさつすることを心がけました。また簡単な中国語での挨拶に加え、ジェスチャーや英語も交えてやり取りを行いました。積極的にコミュニケーションをとりました。発表や試食については、感想を簡単にまとめ、タイミングを見計らって本人に直接伝えるようにも努めました。
「食育教學比賽」
発表の様子(臺中市清水國民小學 朱倖槿營養師 康碧伶廚師)
発表は、各チームそれぞれ5分間の持ち時間で行われました。私の担当は、残り1分・30秒・時間終了の3つのタイミングで、発表者に向けて残り時間を示したボードを掲示することでした。作業自体は非常にシンプルですが、時間は評価基準のひとつでもありミスが許されないため、緊張感をもって臨みました。出場者は発表に集中しているためにタイムカードに気づかないことも多く、なるべく発表者の視線の高さに合わせて、少し長めに掲示するなど、その場で調整を行いました。
今回のテーマ「午餐食惜生」に沿って、発表ではメニューの解説とともに、食品廃棄に伴う環境負荷、地産地消(環境負荷の軽減と地元農業の振興の両面)、食材の栄養や健康効果に関する内容が取り上げられていたように思います。発表の形式は多様で、パワーポイントや紙の教材に加えて、児童の声を録音した音声の再生、アニメキャラクターや生産者へのなりきり、劇や歌の披露など、創意工夫に富んだパフォーマンスが見られました。
発表では、今回のテーマである「午餐食惜生」に沿ってメニューの解説が行われました。例えば食品廃棄に伴う環境負荷、地産地消(環境負荷の軽減と地元農業の振興の両面)、食材の栄養や健康効果に関する内容があげられます。
私はボード掲示を担当していたことや、基本的に視覚的な情報からのみ内容を把握していたこともあり、理解には偏りがあるかもしれません。それでも「食品廃棄が与える影響」や「給食への感謝、食べ切ることの大切さ」といったメッセージは十分に伝わってきました。給食を作る方々が自ら解説を行うことで、メニューの意図や価値に加え、言葉以上の説得力やメッセージが生まれていたと感じました。日々の学校生活の中で、調理に関わる方々の姿や想いに触れる機会は多くありません。本大会のような取り組みがあることで、子どもたちが給食への興味や理解を深めるきっかけになるのではないかと感じました。このような工夫があることで、子どもたちが給食について主体的に関心を持ち、より深く理解していく可能性を感じました。
「料理實作比賽(調理の部)」
揚げ物の温度を確認する様子(彰化市泰和國小 陳建宗廚師)
出場者は着替えと最終衛生チェックを経て、90分間の調理に臨みました。この時間内に、6人分の給食を完成させ、清掃までを行います。会場には大会運営スタッフや審査員、撮影担当者が同席しており、調理の様子はYouTubeを通じてリアルタイムで配信されていました。
私は当初、厨房の外から調理を見学する予定でしたが、途中から入室の許可をいただき、必要な衛生用品を着用したうえで、現場に立ち会うことができました。調理室に実際に入ってみると、外からの観覧では感じられなかった緊張感や臨場感が強く伝わってきました。各チームの動きは無駄がなく、それぞれが十分な準備と訓練を重ねてきたことが伺えました。出場者の真剣な眼差しや、一つひとつの作業に対する丁寧な姿勢を間近に見ることで、私自身も自然と身が引き締まる思いでした。
厨房内では限られたスペースを多くの関係者が共有するため、関係者の動線を妨げないように十分注意しながら見学を行いました。私は小学生の頃に給食センターの見学に訪れた経験はありますが、調理中の厨房に立ち会ったのは今回が初めてです。わずか90分という時間の中で、見栄え・味・衛生・栄養バランスをすべて両立させるためには、段取りやパートナーとの連携の精度が求められます。実際の調理現場を拝見し、給食づくりが携わる方々の高い専門性と訓練に支えられていることを実感するとともに、その一食の背後にある多くの工程や連携の重要性にも気づかされました。
またこうした現場での取り組みを、子どもたちがどのように知り、どのように受け取るのかを考える機会にもなりました。作る側の努力や工夫を知ることは、食材を大切にしようという気持ちや、残さず食べようという姿勢を育むきっかけにもなると感じます。
【完成した給食と試食】
調理終了後には、12チームの完成した給食がずらりと並びました。どのチームも、彩りや盛りつけにまで細やかな工夫が施されており、会場が一気に華やいだ印象を受けました。各チームのメニューは事前に申込書で確認していたものの、実物を前にすると、その完成度の高さやおいしそうな香りに圧倒されました。
試食では、各チームの料理を少しずついただきました。今回の大会テーマに合わせ、かぼちゃの皮や種、ブロッコリーの茎など、通常は調理時に捨てられがちな部位を活用したメニューが多く、ひとつの食材をさまざまな形で使い切る工夫が随所に見られました。食べる側にとっては、一つの食材の様々な食感や味わい方が楽しめます。加えて、地域の特産品が積極的に取り入れられており、台北にいながら台湾各地の味覚を楽しんだような気分にもなりました。
【閉会式を通して得たこと】
表彰式では、調理と発表を終えた出場者たちが緊張から解放され、喜びや達成感を表情ににじませていたのが印象的でした。スピーチの内容を十分に理解できなかったことは残念でしたが、チームで協力し、無事に大会を終えたという安堵と誇らしさがその姿から感じ取れました。閉会後には、何人かの出場者に直接感想を伝えることもできました。大きな交流があったわけではありませんが、なかには写真撮影に誘ってくださった方もおり、言葉を超えた温かいやりとりができたことが嬉しく感じられました。
今回の大会を通じて、給食という一見ありふれた日常的な営みが、子どもの健康や食育、地域農業の振興、環境負荷の低減など、さまざまな社会的課題と密接に関わっていることを再認識しました。
その重要な役割を支えているのが、調理員や栄養士といった現場の専門職の方々です。高い専門性と責任をもって業務にあたっているにもかかわらず、社会的にはその価値が十分に認識されているとは言いがたいのではないかと思います。
給食大会は、そうした専門職の知識や技術に光を当てるとともに、社会に対しても給食の価値、その運営制度や担い手の存在について問い直す場になっていると感じました。今後はこのような取り組みが教育・地域社会の中により広く定着し、給食を支える人々への理解と関心が一層深まっていくことを期待しています。
写真のお声がけをしてくださいました皆様ありがとうございます(新北市全盛美食有限公司 黃昱誌衛管人員 與郭健祥廚師)
文|荻原 遥
今週末、いよいよ「2025 第八屆臺灣學校午餐大賽」の本番を迎えました。
大会当日は開会式、食育発表、調理実習、審査(試食)、閉会式(結果発表及び表彰式)で構成されています。
会場準備(4月18日〜19日)
2日間にわたる会場準備では、関係者の方々と協力しながら、清掃や会場の装飾、調理器具の確認・配置などを行いました。18日に行われた調理器具の確認作業にあたっては、中国語で記載された器具リストをもとに、各名称が指す器具について事前に説明を受けた上で確認作業を進めました。中には見慣れない名称や形状の器具もありましたが、確認漏れや誤認がないよう、丁寧に照合・点検を行いました。また大会当日はYouTubeでのライブ配信も予定されていたため、音響・撮影機材や通信環境の最終確認も並行して行われていました。
翌19日は、出場者主体の準備が行われました。食材の搬入をはじめ、競技ルールの説明、調理場の操作確認、写真撮影会などが実施されました。出場者は最も遠方では台南から、食材を持参して到着されました。
調理場の操作確認では、器具の洗浄やコンロの火加減の点検、仕込みが必要な食材の準備などが行われ、各チームは限られた30分間の中で真剣に取り組んでいました。作業中には出場者から多くの質問が寄せられ、後に協会職員に確認したところ、キッチンの使用範囲や下準備の可否、エプロンの着替えタイミングなど、実践的な内容が中心だったとのことです。
準備がひと段落すると、出場者にはヘアメイクが施され、写真撮影が行われました。写真撮影は、大会において重要なプロセスの一つと位置づけられています。これまで、給食の現場で働く方々の姿はあまり表に出ることがなく、その高い専門性にもかかわらず、プロフェッショナルとして注目される機会は限られていました。本大会では、写真撮影を通して、彼らが“プロ”として扱われる特別な体験を得られること、そしてその仕事ぶりがより多くの人々に知られることを目的としています。初めはライトやカメラに緊張していた出場者も、撮影の最後には堂々とした姿で写真に収まっていました。
大会当日(4月20日)
【大会当日に心がけたこと】
当日は限られた時間内で複数の工程が同時進行するため、実習生として自らの役割を的確に果たすと同時に、円滑な運営の妨げとならないよう配慮することを心がけました。特に以下の2点に留意して行動しました。
受付の様子
1.自らの担当業務を確実に遂行すること
私の主な業務は会場準備、受付、そして食育発表におけるタイムカードの掲示でした。準備期間も含め大会全体が中国語で進行する中で、周囲の状況をよく観察し、自分にできることには積極的に参加するよう努めました。運営の妨げとならぬよう、行動には細心の注意を払い、必要に応じて逐一確認をとるようにしました。
2.言語の壁を越えて、参加者とコミュニケーションを図ること
安心感や応援の気持ちが伝わるよう意識すること
出場者や関係者に不安や戸惑いを与えないよう、非言語的な工夫も含めてコミュニケーションを図ることを意識しました。出場チームの顔と名前を覚えるよう努め、目が合った際には笑顔であいさつすることを心がけました。また簡単な中国語での挨拶に加え、ジェスチャーや英語も交えてやり取りを行いました。積極的にコミュニケーションをとりました。発表や試食については、感想を簡単にまとめ、タイミングを見計らって本人に直接伝えるようにも努めました。
「食育教學比賽」
発表は、各チームそれぞれ5分間の持ち時間で行われました。私の担当は、残り1分・30秒・時間終了の3つのタイミングで、発表者に向けて残り時間を示したボードを掲示することでした。作業自体は非常にシンプルですが、時間は評価基準のひとつでもありミスが許されないため、緊張感をもって臨みました。出場者は発表に集中しているためにタイムカードに気づかないことも多く、なるべく発表者の視線の高さに合わせて、少し長めに掲示するなど、その場で調整を行いました。
今回のテーマ「午餐食惜生」に沿って、発表ではメニューの解説とともに、食品廃棄に伴う環境負荷、地産地消(環境負荷の軽減と地元農業の振興の両面)、食材の栄養や健康効果に関する内容が取り上げられていたように思います。発表の形式は多様で、パワーポイントや紙の教材に加えて、児童の声を録音した音声の再生、アニメキャラクターや生産者へのなりきり、劇や歌の披露など、創意工夫に富んだパフォーマンスが見られました。
発表では、今回のテーマである「午餐食惜生」に沿ってメニューの解説が行われました。例えば食品廃棄に伴う環境負荷、地産地消(環境負荷の軽減と地元農業の振興の両面)、食材の栄養や健康効果に関する内容があげられます。
私はボード掲示を担当していたことや、基本的に視覚的な情報からのみ内容を把握していたこともあり、理解には偏りがあるかもしれません。それでも「食品廃棄が与える影響」や「給食への感謝、食べ切ることの大切さ」といったメッセージは十分に伝わってきました。給食を作る方々が自ら解説を行うことで、メニューの意図や価値に加え、言葉以上の説得力やメッセージが生まれていたと感じました。日々の学校生活の中で、調理に関わる方々の姿や想いに触れる機会は多くありません。本大会のような取り組みがあることで、子どもたちが給食への興味や理解を深めるきっかけになるのではないかと感じました。このような工夫があることで、子どもたちが給食について主体的に関心を持ち、より深く理解していく可能性を感じました。
「料理實作比賽(調理の部)」
出場者は着替えと最終衛生チェックを経て、90分間の調理に臨みました。この時間内に、6人分の給食を完成させ、清掃までを行います。会場には大会運営スタッフや審査員、撮影担当者が同席しており、調理の様子はYouTubeを通じてリアルタイムで配信されていました。
私は当初、厨房の外から調理を見学する予定でしたが、途中から入室の許可をいただき、必要な衛生用品を着用したうえで、現場に立ち会うことができました。調理室に実際に入ってみると、外からの観覧では感じられなかった緊張感や臨場感が強く伝わってきました。各チームの動きは無駄がなく、それぞれが十分な準備と訓練を重ねてきたことが伺えました。出場者の真剣な眼差しや、一つひとつの作業に対する丁寧な姿勢を間近に見ることで、私自身も自然と身が引き締まる思いでした。
厨房内では限られたスペースを多くの関係者が共有するため、関係者の動線を妨げないように十分注意しながら見学を行いました。私は小学生の頃に給食センターの見学に訪れた経験はありますが、調理中の厨房に立ち会ったのは今回が初めてです。わずか90分という時間の中で、見栄え・味・衛生・栄養バランスをすべて両立させるためには、段取りやパートナーとの連携の精度が求められます。実際の調理現場を拝見し、給食づくりが携わる方々の高い専門性と訓練に支えられていることを実感するとともに、その一食の背後にある多くの工程や連携の重要性にも気づかされました。
またこうした現場での取り組みを、子どもたちがどのように知り、どのように受け取るのかを考える機会にもなりました。作る側の努力や工夫を知ることは、食材を大切にしようという気持ちや、残さず食べようという姿勢を育むきっかけにもなると感じます。
【完成した給食と試食】
調理終了後には、12チームの完成した給食がずらりと並びました。どのチームも、彩りや盛りつけにまで細やかな工夫が施されており、会場が一気に華やいだ印象を受けました。各チームのメニューは事前に申込書で確認していたものの、実物を前にすると、その完成度の高さやおいしそうな香りに圧倒されました。
試食では、各チームの料理を少しずついただきました。今回の大会テーマに合わせ、かぼちゃの皮や種、ブロッコリーの茎など、通常は調理時に捨てられがちな部位を活用したメニューが多く、ひとつの食材をさまざまな形で使い切る工夫が随所に見られました。食べる側にとっては、一つの食材の様々な食感や味わい方が楽しめます。加えて、地域の特産品が積極的に取り入れられており、台北にいながら台湾各地の味覚を楽しんだような気分にもなりました。
【閉会式を通して得たこと】
表彰式では、調理と発表を終えた出場者たちが緊張から解放され、喜びや達成感を表情ににじませていたのが印象的でした。スピーチの内容を十分に理解できなかったことは残念でしたが、チームで協力し、無事に大会を終えたという安堵と誇らしさがその姿から感じ取れました。閉会後には、何人かの出場者に直接感想を伝えることもできました。大きな交流があったわけではありませんが、なかには写真撮影に誘ってくださった方もおり、言葉を超えた温かいやりとりができたことが嬉しく感じられました。
今回の大会を通じて、給食という一見ありふれた日常的な営みが、子どもの健康や食育、地域農業の振興、環境負荷の低減など、さまざまな社会的課題と密接に関わっていることを再認識しました。
その重要な役割を支えているのが、調理員や栄養士といった現場の専門職の方々です。高い専門性と責任をもって業務にあたっているにもかかわらず、社会的にはその価値が十分に認識されているとは言いがたいのではないかと思います。
給食大会は、そうした専門職の知識や技術に光を当てるとともに、社会に対しても給食の価値、その運営制度や担い手の存在について問い直す場になっていると感じました。今後はこのような取り組みが教育・地域社会の中により広く定着し、給食を支える人々への理解と関心が一層深まっていくことを期待しています。