出来立ての給食が教室へ配達される様子(桃園市龜山區 大崗國民小學にて)
文・圖|荻原 遥
今週は、「第八屆臺灣學校午餐大賽」の決勝に進出したチームへの事前訪問が行われました。取材では、インタビューや写真撮影に加え、実際に給食をいただく機会もありました。私は、決勝進出12チームのうち3チームの訪問に同行させていただきました。
上:職員の方々、下:取材にていただいた給食
最初に訪問したのは、創立100年以上の歴史を持ち、伝統芸術「獅子舞」を特色とする地域とのつながりが深い小学校です。同校は、自校調理方式を採用しており、敷地内には給食室が設けられています。
迎えてくださったのは、エネルギッシュで笑顔が素敵な栄養士の薛雲華さんと、スペインでの滞在経験を持ち、スパイスの使い方に長けたシェフの黃文龍さんです。当日は、協會職員の陳怡璇さんと洪啓傑さんに同行させていただきました。
取材はあらかじめ用意された5つの質問を中心に、約40分にわたって実施されました。私は取材の内容を理解することはできないのですが、お二人のやりとりからは信頼関係の深さが伝わってきました。
この日は、実際に給食も試食させていただきました。メニューは、糙米飯、筍干燒豆干、金菇燴冬瓜、有機蔬菜、紫菜蛋花湯(玄米、干し筍と厚揚げの煮物、えのきと冬瓜のとろみ煮、有機野菜、のりと卵のスープ)。出来たての給食をいただくことができるのは、自校方式ならではの特徴です。
食後には、薛さんの案内で児童の給食時間の様子を見学させていただきました。子どもたちは薛さんの姿を見つけると笑顔で手を振っており、日常的な交流の積み重ねがうかがえる場面でした。薛さんは毎日教室を巡回し、児童にその日の給食について感想を尋ねながら、食事の様子を直接確認しているそうです。
また、来月に予定されている「日本食特集」に向けて、メニュー紹介の放送練習をしている児童や、野菜の食べ残し削減キャンペーンの呼びかけ練習をしている児童の姿も見学させていただきました。子どもたちが主体的に食育に関わる機会が設けられていることは非常に印象的でした。
写真撮影の様子
次に訪問したのは、日本で言うところの「給食センター」にあたる調理施設を持つ企業です。今回は、大享職員の洪莞紜さんに同行し、昨年の決勝進出チームであるシェフの郭健祥さんと衛生管理師の黃昱誌さんを訪問しました。これまで会社からは合計3チームが決勝に進出されており、衛生管理師の黃昱誌さんは3度目の挑戦になるそうです。
このチームの応募用紙には、メニューに関する興味深い解説が添えられており、以下はその一部を翻訳したものです。
「多くの台湾人は、学校や家庭、友人との食事を通じて、喜怒哀楽とともにさまざまな食べ物を分かち合う経験をしてきました。そうした中で『食べ物を大切にする』という節約の美徳が社会に根づいてきました。」
私自身のこれまでの台湾での経験を振り返っても、食を通じた人と人とのつながりが非常に大切にされていることを実感しております。台湾の方々は、私のような初めて訪れた者に対しても変わらぬ温かさで接してくださり、食事の場では笑顔で料理を勧めてくださる場面が何度もありました。
今回の取材では、食べ物を分け合うという風習が家庭内にとどまらず、学校給食の場面でも見られるのかという点に疑問を抱きました。日本の給食では、こうした行為はあまり見られないように思われます。そこで洪さんを通じてお二人にお尋ねしたところ、台湾では子どもたちが給食の時間に食べ物をシェアする光景は日常的に見られるとのことでした。黃昱誌さんはその場でジェスチャーを交えながら、英語で説明してくださり、特に苦手な食材があった場合には、子どもたちは自然とそれを友人に渡すことがあると教えてくださいました。
この際、単に食べ物を物理的に分け合うだけでなく、その場の感情や気持ちまでも共有されることから、より美味しいものを届けたいという思いを込めて日々の調理にあたっている、とのお話が印象的です。
取材の様子
最後に訪問したのは、新北市にあるもう一つの給食センターです。今回は、大享職員の朱曉萱さんに同行させていただきました。
この企業からは3チームが大会に応募しており、選出されたのは、栄養士の毛韻晴さんとシェフの洪國棟さんのペアです。本センターは、数年前にHACCPを満たす施設へと改築されており、衛生管理面で高い評価を得ているそうです。
訪問時には、ちょうど給食が学校へと配送される時間帯であり、トラックがひっきりなしに出入りしていました。
事前に朱さんから伺っていたとおり、このチームのメニュー名は非常にユニークで、漢字だけでは意味が分かりにくいものの、中国語で発音すると言葉遊びになっているとのことでした。メニュー自体にもさまざまな工夫が凝らされており、たとえば、お茶だけでなくお茶の葉までも利用したご飯や、「菜尾湯」(昔ながらの農業社会において宴席の残り物を加熱して作られていた伝統的なスープ)に着想を得た汁物などが含まれていました。いずれの料理にも、本大会のテーマである「食を無駄にしない精神」が色濃く反映されておりました。
なお、こうしたユニークな料理名が日常的に使用されているのかどうかについて、朱さんに確認していただいたところ、通常はそうした名称は使用されていないとのご説明をいただきました。メニューはシステム上で登録される必要があるため、普段は材料や仕上がった料理がわかるような実用的な名前が用いられているそうです。
来週からは、取材時の録音データを文字起こしし、翻訳された内容を読み進める予定です。インタビューではどのようなお話がされていたのか、今からとても楽しみにしています。
出来立ての給食が教室へ配達される様子(桃園市龜山區 大崗國民小學にて)
文・圖|荻原 遥
今週は、「第八屆臺灣學校午餐大賽」の決勝に進出したチームへの事前訪問が行われました。取材では、インタビューや写真撮影に加え、実際に給食をいただく機会もありました。私は、決勝進出12チームのうち3チームの訪問に同行させていただきました。
3月25日 桃園市 龜山區 大崗國民小學
最初に訪問したのは、創立100年以上の歴史を持ち、伝統芸術「獅子舞」を特色とする地域とのつながりが深い小学校です。同校は、自校調理方式を採用しており、敷地内には給食室が設けられています。
迎えてくださったのは、エネルギッシュで笑顔が素敵な栄養士の薛雲華さんと、スペインでの滞在経験を持ち、スパイスの使い方に長けたシェフの黃文龍さんです。当日は、協會職員の陳怡璇さんと洪啓傑さんに同行させていただきました。
取材はあらかじめ用意された5つの質問を中心に、約40分にわたって実施されました。私は取材の内容を理解することはできないのですが、お二人のやりとりからは信頼関係の深さが伝わってきました。
この日は、実際に給食も試食させていただきました。メニューは、糙米飯、筍干燒豆干、金菇燴冬瓜、有機蔬菜、紫菜蛋花湯(玄米、干し筍と厚揚げの煮物、えのきと冬瓜のとろみ煮、有機野菜、のりと卵のスープ)。出来たての給食をいただくことができるのは、自校方式ならではの特徴です。
食後には、薛さんの案内で児童の給食時間の様子を見学させていただきました。子どもたちは薛さんの姿を見つけると笑顔で手を振っており、日常的な交流の積み重ねがうかがえる場面でした。薛さんは毎日教室を巡回し、児童にその日の給食について感想を尋ねながら、食事の様子を直接確認しているそうです。
また、来月に予定されている「日本食特集」に向けて、メニュー紹介の放送練習をしている児童や、野菜の食べ残し削減キャンペーンの呼びかけ練習をしている児童の姿も見学させていただきました。子どもたちが主体的に食育に関わる機会が設けられていることは非常に印象的でした。
3月26日 新北市 全盛美食有限公司
次に訪問したのは、日本で言うところの「給食センター」にあたる調理施設を持つ企業です。今回は、大享職員の洪莞紜さんに同行し、昨年の決勝進出チームであるシェフの郭健祥さんと衛生管理師の黃昱誌さんを訪問しました。これまで会社からは合計3チームが決勝に進出されており、衛生管理師の黃昱誌さんは3度目の挑戦になるそうです。
このチームの応募用紙には、メニューに関する興味深い解説が添えられており、以下はその一部を翻訳したものです。
「多くの台湾人は、学校や家庭、友人との食事を通じて、喜怒哀楽とともにさまざまな食べ物を分かち合う経験をしてきました。そうした中で『食べ物を大切にする』という節約の美徳が社会に根づいてきました。」
私自身のこれまでの台湾での経験を振り返っても、食を通じた人と人とのつながりが非常に大切にされていることを実感しております。台湾の方々は、私のような初めて訪れた者に対しても変わらぬ温かさで接してくださり、食事の場では笑顔で料理を勧めてくださる場面が何度もありました。
今回の取材では、食べ物を分け合うという風習が家庭内にとどまらず、学校給食の場面でも見られるのかという点に疑問を抱きました。日本の給食では、こうした行為はあまり見られないように思われます。そこで洪さんを通じてお二人にお尋ねしたところ、台湾では子どもたちが給食の時間に食べ物をシェアする光景は日常的に見られるとのことでした。黃昱誌さんはその場でジェスチャーを交えながら、英語で説明してくださり、特に苦手な食材があった場合には、子どもたちは自然とそれを友人に渡すことがあると教えてくださいました。
この際、単に食べ物を物理的に分け合うだけでなく、その場の感情や気持ちまでも共有されることから、より美味しいものを届けたいという思いを込めて日々の調理にあたっている、とのお話が印象的です。
3月28日 新北市 統鮮美食股份有限公司
最後に訪問したのは、新北市にあるもう一つの給食センターです。今回は、大享職員の朱曉萱さんに同行させていただきました。
この企業からは3チームが大会に応募しており、選出されたのは、栄養士の毛韻晴さんとシェフの洪國棟さんのペアです。本センターは、数年前にHACCPを満たす施設へと改築されており、衛生管理面で高い評価を得ているそうです。
訪問時には、ちょうど給食が学校へと配送される時間帯であり、トラックがひっきりなしに出入りしていました。
事前に朱さんから伺っていたとおり、このチームのメニュー名は非常にユニークで、漢字だけでは意味が分かりにくいものの、中国語で発音すると言葉遊びになっているとのことでした。メニュー自体にもさまざまな工夫が凝らされており、たとえば、お茶だけでなくお茶の葉までも利用したご飯や、「菜尾湯」(昔ながらの農業社会において宴席の残り物を加熱して作られていた伝統的なスープ)に着想を得た汁物などが含まれていました。いずれの料理にも、本大会のテーマである「食を無駄にしない精神」が色濃く反映されておりました。
なお、こうしたユニークな料理名が日常的に使用されているのかどうかについて、朱さんに確認していただいたところ、通常はそうした名称は使用されていないとのご説明をいただきました。メニューはシステム上で登録される必要があるため、普段は材料や仕上がった料理がわかるような実用的な名前が用いられているそうです。
来週からは、取材時の録音データを文字起こしし、翻訳された内容を読み進める予定です。インタビューではどのようなお話がされていたのか、今からとても楽しみにしています。