上:台湾の給食例 下:日本の給食例
文|荻原 遥
圖|大享食育協會
今週は、第八屆臺灣學校午餐大賽決勝進出者の応募用紙を拝読しました。翻訳したものと原本を照らし合わせながら、気になった点は必要に応じて調べながら読み進めました。私が確認したのは決勝に進出した12チーム分ですが、細部にわたって読み解くにはかなりの時間を要しました。決勝進出チームの選定には、栄養基準値、テーマ適合性、実現可能性など、数多くの審査基準が細かく確認されており、職員の方々の尽力は計り知れません。
今年の大会テーマである「午餐食惜生」には、二つの側面が求められています。
給食提供者に対して:「食材を上手に利用し、無駄を省くこと」
食べる人に対して:「食材を大切にし、食べ残しを減らすこと」
応募作品には、二酸化炭素排出量の削減や食品廃棄物の最小化をはじめ、食農教育の理念を反映させたデザインが求められています。具体的には、地域農業の認知支援、バランスの取れた食生活の促進、食文化の継承と革新、さらには国連の持続可能な開発目標(SDGs)に触れることが求められます。
台湾各地から寄せられた応募用紙には、その地域特有の習慣や地理的特徴が色濃く反映されています。たとえば、台中市内の沿岸部に位置する中学校では、魚介類を身近な食材として活用し、給食を通じて子どもたちに魚食文化を伝えることに重点を置いています。さらに、台中市大甲区の小学校は、地元の祭事「大甲媽祖遶境」の郷土料理にインスパイアされた献立を提案していました。媽祖はこの地域で強く信仰されている道教の女神で、航海の守護神とされています。「大甲媽祖」のほか、「菜尾湯」や「辦桌」などは私が応募用紙を通じて学んだ台湾の文化です。献立には台湾の伝統料理を参考にしつつ、テーマや栄養基準を考慮したうえで、給食用にアレンジされたものが多く見受けられました。 伝統料理の活用は、地元の食材を取り入れることにもつながり、地産地消の促進にも貢献しています。
日本の給食と台湾の給食には共通点も多くあります。例えば、両国とも教室で食事をとる点や、主食が米であることが挙げられます。しかし、献立にはいくつかの相違点も存在します。台湾の典型的な給食メニューは「三菜一湯」、つまり主食、主菜、副菜2つ、そして汁物の構成です。一方で、日本の給食は「一汁二菜」が基本となっており、主食、主菜、副菜、汁物、牛乳という組み合わせが一般的です。
日本の給食では、具沢山の汁物が多く見られますが、台湾の給食では汁物に使われる具材は2種類程度にとどまり、その分副菜が多くなっている傾向があるようです。日本の「学校給食実施基準(文部科学省, 2021)」と台湾の「學校午餐食物內容及營養基準(衛生福利部國民健康署, 2020)」を比較した結果、栄養基準に大きな差異は見られませんでしたが、ビタミンやミネラルに関する項目は日本の方がより細かく設定されていることが確認されました。
使用頻度の高い食材の傾向
給食は、厳格に設定された予算内で提供されることが特徴の一つです。日本の給食では鮭、鯖、鰺といった魚がよく使われますが、台湾では特産である虱目魚や台湾鯛がよく使用されています。鯛は日本では高級魚として知られていますが、台湾では給食にも用いられる一般的な食材です。また、ドラゴンフルーツやグアバといった果物も台湾の給食では定番ですが、これらは一般的には日本では安価に入手しづらく、給食で見かけることはほとんどありません。こうした食材の選定には、台湾特有の気候や流通体制が反映されており、日常の給食を通しても、地域ごとの農業環境や食文化の違いが鮮明に浮かび上がります。一方で、使用頻度の高い食材が必ずしも子どもたちに好まれるとは限りません。たとえば台湾では豆腐の種類が豊富であり、給食でも頻繁に使用される食材ですが、苦手とする子どもも一定数存在するようです。また、雑穀を使用したご飯も日本に比べて提供頻度が高い一方で、同様に苦手意識を持つ児童も少なくないとのことです。
上:台湾の給食例 下:日本の給食例
文|荻原 遥
圖|大享食育協會
今週は、第八屆臺灣學校午餐大賽決勝進出者の応募用紙を拝読しました。翻訳したものと原本を照らし合わせながら、気になった点は必要に応じて調べながら読み進めました。私が確認したのは決勝に進出した12チーム分ですが、細部にわたって読み解くにはかなりの時間を要しました。決勝進出チームの選定には、栄養基準値、テーマ適合性、実現可能性など、数多くの審査基準が細かく確認されており、職員の方々の尽力は計り知れません。
第八屆臺灣學校午餐大賽のテーマとその意義
今年の大会テーマである「午餐食惜生」には、二つの側面が求められています。
給食提供者に対して:「食材を上手に利用し、無駄を省くこと」
食べる人に対して:「食材を大切にし、食べ残しを減らすこと」
応募作品には、二酸化炭素排出量の削減や食品廃棄物の最小化をはじめ、食農教育の理念を反映させたデザインが求められています。具体的には、地域農業の認知支援、バランスの取れた食生活の促進、食文化の継承と革新、さらには国連の持続可能な開発目標(SDGs)に触れることが求められます。
応募用紙から学ぶ台湾文化
台湾各地から寄せられた応募用紙には、その地域特有の習慣や地理的特徴が色濃く反映されています。たとえば、台中市内の沿岸部に位置する中学校では、魚介類を身近な食材として活用し、給食を通じて子どもたちに魚食文化を伝えることに重点を置いています。さらに、台中市大甲区の小学校は、地元の祭事「大甲媽祖遶境」の郷土料理にインスパイアされた献立を提案していました。媽祖はこの地域で強く信仰されている道教の女神で、航海の守護神とされています。「大甲媽祖」のほか、「菜尾湯」や「辦桌」などは私が応募用紙を通じて学んだ台湾の文化です。献立には台湾の伝統料理を参考にしつつ、テーマや栄養基準を考慮したうえで、給食用にアレンジされたものが多く見受けられました。 伝統料理の活用は、地元の食材を取り入れることにもつながり、地産地消の促進にも貢献しています。
台湾の学校給食と日本の学校給食を比較して
献立の構成とその違い
日本の給食と台湾の給食には共通点も多くあります。例えば、両国とも教室で食事をとる点や、主食が米であることが挙げられます。しかし、献立にはいくつかの相違点も存在します。台湾の典型的な給食メニューは「三菜一湯」、つまり主食、主菜、副菜2つ、そして汁物の構成です。一方で、日本の給食は「一汁二菜」が基本となっており、主食、主菜、副菜、汁物、牛乳という組み合わせが一般的です。
日本の給食では、具沢山の汁物が多く見られますが、台湾の給食では汁物に使われる具材は2種類程度にとどまり、その分副菜が多くなっている傾向があるようです。日本の「学校給食実施基準(文部科学省, 2021)」と台湾の「學校午餐食物內容及營養基準(衛生福利部國民健康署, 2020)」を比較した結果、栄養基準に大きな差異は見られませんでしたが、ビタミンやミネラルに関する項目は日本の方がより細かく設定されていることが確認されました。
使用頻度の高い食材の傾向
給食は、厳格に設定された予算内で提供されることが特徴の一つです。日本の給食では鮭、鯖、鰺といった魚がよく使われますが、台湾では特産である虱目魚や台湾鯛がよく使用されています。鯛は日本では高級魚として知られていますが、台湾では給食にも用いられる一般的な食材です。また、ドラゴンフルーツやグアバといった果物も台湾の給食では定番ですが、これらは一般的には日本では安価に入手しづらく、給食で見かけることはほとんどありません。こうした食材の選定には、台湾特有の気候や流通体制が反映されており、日常の給食を通しても、地域ごとの農業環境や食文化の違いが鮮明に浮かび上がります。一方で、使用頻度の高い食材が必ずしも子どもたちに好まれるとは限りません。たとえば台湾では豆腐の種類が豊富であり、給食でも頻繁に使用される食材ですが、苦手とする子どもも一定数存在するようです。また、雑穀を使用したご飯も日本に比べて提供頻度が高い一方で、同様に苦手意識を持つ児童も少なくないとのことです。